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経営改善計画の作成の仕方

金融機関からの支援は、お金を借りるか、返済を止めさせてもらうしかありません。そのときに、

「抜本的な経営改善計画案を作成してください。」

と、金融機関からこのような言葉を使われたら、最終通告と考えましょう。すなわち、金融機関の納得する計画案を出さなければ、切り捨てられてしまうかもしれないということです。「この程度の数字でいいだろう。」は通用しません。「絶対にこうしなければ」という数字を作る必要があるのです。

再生計画案の作り方

これから作る計画案は、必ず会社自らが作る必要があります。会計事務所やコンサルタントなどの他人が作った計画案など、達成できるわけがありません。

借入金状況表

まずはじめに作るのが、借入金状況表です。取引金融機関ごとに、下記のような算式で無担保債務を算出し、これを返済原資(税引後利益+減価償却費)で除して、債務償還年数を算定します。この債務償還年数が5年~10年以内にならないといけません。
無担保債務=借入金残高-預金担保-担保(時価評価額)

長期事業計画表

次に長期事業計画表を作ります(3~5年程度の中期計画で十分です)。作り方を説明します。

 返済
(1)の借入金状況表を作成すれば、今後5年~10年以内に返済しなければならない金額が確定します。そこで、この年間の要返済額を、とりあえず毎年均一の数字で埋めていきます。
 営業利益
上記の返済額を前提にした営業利益を逆算します。考慮するのは、
1)繰越欠損金がいつまで適用できるのか
2)不動産などを売却したときに売却損益がどのくらい出るのか
3)2)の売却による借入金の返済で、支払利息がどれぐらい減るのか
4)リストラの一環として従業員を解雇する場合、退職金はどれくらい必要か
などです。
 売上・売上総利益(粗利益)
次に、売上と売上総利益をうめます。このとき注意することは、『絶対に右肩上がりの数字にしないでください。』今年の売上が100、来年は105、2年目は110と徐々に増やしていき、ひどいケースだと10年後の売上が今年の2倍になって、借金もなしという計画案も珍しくありません。こんな計画案を作って結果として達成できなければ、その時点で三下り半を出す金融機関もあるのです。できもしない数字を並べることは、かえって自分の首を絞めるだけの結果になりかねません。
 販売費・一般管理費(経費)
返済を前提にした営業利益と、実態に即した粗利益が決まったら、後残るは経費だけです。すなわち、経費は、事業計画の中で一番最後にかつ逆算して出てくることになります。

経営改善計画表

業績(実績)が年々下降している場合は、この経営改善計画表を作成する必要があります。作り方を簡単に説明します。

 原因
まず、業績が下降した原因を何でもいいから書き出します。「得意先が倒産した」とか「営業力が不足している」とかです。ただし、自分たちの力ではどうすることもできない泣き言は、書いてもしょうがありません。たとえば、「景気がよくならない」とか「政治が悪い」とかです。すべての企業は同じ土俵で勝負しています。回りが悪いという言い訳は、自分はもうダメだと宣言しているようなものです。
 改善策
それぞれの原因についてどう改善していくかを書きます。
 効果
改善策を講じることで具体的にどのような効果が出るのかを書きます。そして、効果の欄には必ず数字を埋めていきます。たとえば「現金仕入により仕入単価を値引交渉し、利益率を2%アップする」などです。
 担当者
次に、②の改善策を実行する担当者を決めます。この「誰が?」を決めないと、責任の所在が不明瞭になり、最後は責任のなすりあいで終わってしまいます。
 いつ
最後は「いつ」です。そしてこの「いつ」は2つあります。それは、「いつ着手して」「いつ終了するのか」です。計画というものは、必ず期限を決める必要があります。

再建計画表

最後に作るのが再建計画表です。作り方は簡単です。
 実績
まず、過去3期分の決算書の数字を書きます。
 今期の見込み
次に、今期の見込みの数字をうめます。ここはどんなに業績が悪かろうと、実際の数字を埋めます。その場凌ぎで数字を作っても、決算が終わればすぐにバレてしまいます。しかも、ここで嘘がバレれば、金融機関の信用は完全に無くなってしまいます。今期の見込みには、実際にこれしかできないという数字を埋めてください。
 対策実行後
上記の長期事業計画表の1期目か2期目の数字をそのまま転記します。
 対策
こうして数字を埋めていくと、今期の見込みと対策実行後の数字が異なるはずです。この差をどうやって実現するのかを、対策の欄に言葉で埋めていきます。ここでは面倒でもちゃんと帳簿を広げて、何が無駄になっているのか、必要不可欠なものは何かを、きちんと精査し、具体的に記載する必要があります。

計画案のまとめ

上記の表をすべて埋めたら、具体的なアクションプランを項目ごとに分けて文章にまとめます。
 基本方針
『3~5年後にはこういう会社にするんだ』というビジョンを記載します。
 今後の収益計画
何を、どこに、いくつ、いくらで売るという方針を記載します。
 リストラ計画(不動産の売却)
どの不動産を、いくらで、いつ頃売るかという事を記載します。
 リストラ計画(固定費の削減)
従業員の削減計画や営業所の閉鎖、本社移転等の計画を作成します。
 今後3ヵ年の終止計画
ここは、前項で作成した長期(中期)計画表と再建計画案を添付します。
 弊社の現状分析
直近の決算書をもとに、現在の実体を記載します。過去に粉飾をしていれば、修正貸借対照表や修正損益計算書を作成して、あるがままの姿を提示します。
 問題点の整理と対応
「なぜ業績が落ちたのか?」「どこにどういう問題があって、どう改善していくのか?」を、きちんと精査してまとめます。添付する表は、「経営改善計画表」でかまいません。
 経営責任について
過去の粉飾の度合いがあまりにも激しい場合など、経営責任ついても言及しなければなりません。ただし、一般的な中小企業の経営責任の取り方としては、
1)役員報酬のカット
2)減資
3)私財提供
にとどめておくべきでしょう。
 資金繰り表
最後に資金繰り表を添付します。いつ、いくら不足して、いつ返せるのかを、きちんと表にまとめる必要があります。
 その他
上記のほかにも、次のような項目も状況に合わせて追加していきます。
●当社の社会的存在意義
●最悪倒産した場合の周りに与える影響
●破産をした場合との比較
●民事再生法との比較
●保証人の対応
●金融機関側のメリット
●懸案事項
そして、交渉のポイントは、次の点を強調することです。
1)経済的合理性
●回収の極大化
2)大義名分
●仕入れ(下請け)先に与える影響
●得意先に与える影響
●雇用の維持
●地域経済に与える影響

再生対策シミュレーション

上記の再生計画の作成を進めるにあたって、一番ネックとなるのが具体的な事業再建対策手法です。ここでは、この事業再建対策の抜本的手法について説明します。

不採算部門の撤退・売却を考える

不採算部門の撤退・売価を考え、採算の取れる事業で、今後どのくらいの収益が確保できるのかを概算でつかみます。

自主再建が可能かどうかを判断する

前項で算出した利益をもとに下記の算式で債務償還年数を算定してみます。

借入金残高÷1年間の返済原資=何年か?

ここで、答えが「何とか10年以内に返せそうだ」となれば、とりあえずは自主再建が可能と判断できます。ところが、どう頑張っても10年では無理となれば、追加の融資やリスケで乗り切るという発想は、完全に捨て去る必要があります。すなわち、次のようなもっとドラスティックな対応を検討する必要があるのです。

現在の会社をそのまま残す場合

 長期の返済に切り換える(リスケする)
1)長期借入金と短期借入金を合わせた借入金総額を一括して延長する
ここで重要なのは、短期借入金も長期借入金として返済期間を延長するという点です。しなわち、長期借入金だけ伸ばして表面上資金繰りを安定させても、『短期借入金の返済期間が来たタイミングで、切り捨てられるかもしれない』という起爆剤を残したままでは、根本的な問題の解消にはならないからです。

2)約定を切り換える
長期の返済に組み替えてくれたとはいても、契約内容はあくまでも『半年(1年)ごとの見直し』になっています。ということは、半年(1年)後になって、『金融庁の検査で指摘されてしまいましたので、やっぱり一括して返済してください。』と言われても何も文句が言えないことになります。したがって、長・短合わせた借入金を50年で支払うという内容に、契約そのものを変えなければ何の意味もありません。

 特定調停法や中小企業再生支援協議会の活用
1)特定調停法
正式には、『特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律』といいます。法的な手続きですが、破産や民事再生法のような倒産手続きではありません。あくまでも話し合いによる解決を目指しますが、ただ単にその話し合いを、裁判所で行いましょうというものです。ただし、この手続きに参加することは任意で、法律的に強制力はありませんので、金融機関がはじめから非協力的な場合は、成立する見込みは皆無です。

2)中小企業再生支援協議会
再生支援協議会には、産業再生機構のように金融機関の持つ債権を買い取るシステムはありませんが、再生支援協議会が『この企業を再生させるには金融機関の債権放棄が必要不可欠だ』と判断し、この計画案に合理性があれば、債権放棄もやむなしとしている金融機関も少なくありません。すなわち、金融機関の借入金を減らすことが、再生支援協議会を使用することで実現する可能性があるのです。(ただし、これも強制力はありません)

3)私的整理に関するガイドライン
これも、複数の金融機関が債権放棄をする場合の1つの指針となるものです。ただし、このガイドラインの適用は中小企業にとってハードルが高いので、適用のメリットは小さいと考えていいでしょう。

 民事再生法
長期の返済切り換えることが不可能、また、金融機関の債務だけを減らす方法も取れないということなら、対応は必然的にドラスティックなものにならざるをません。特に、
●いろいろな策を模索している間に資金繰りが破綻し、手形が不渡りになってしまう。
●後継者が会社を引き継ぎたいという意思を強く持っている。しかし、後継者には負の遺産を引き継がせたくない。
ということなら、最後は民事再生法を申請するしかありません。

 債務をカットする際に生じる最大の問題点
会社をそのまま残す策としては、大まかに前記①~③のとおりですが、ここでもう1点、検討しなければならない重要な事項があります。それは税務上の問題です。つまり、会社に繰越欠損金がない、また含み損がない場合は、たとえどのような手続きをとっても、債権放棄された額に税金が課されることになるので注意が必要です。

別の会社で存続を目指す

 M&A(スポンサー企業へ営業を譲渡する)
同業他社で会社の事業を買い取ってくれるところを探し、その会社へ営業譲渡するという手法です。この第三者に営業譲渡をする手法は、民事再生手続の中で行うことも可能です。民事再生手続きの中で営業譲渡する場合は、株主総会の特別決議も必要なく、裁判所の許可だけで行えるので、敵対関係の株主がいても実行できます。また、裁判所の許可を得て営業譲渡をするわけですから、後日になって債権者からクレームをつけられる心配はありません。
再生の手法は、それぞれ単独で使うのではなく、いろいろな組み合わせができることを頭に入れておいてください。

 第二会社方式による再生策
のM&Aは、あくまでも第三者の法人で再生を目指す手法です。しかし、これでは経営の舵取りは完全に第三者の手に渡ってしまい、経営者としてはあまりおもしろみがありません。できれば、一族で完全な支配権を持ち、また舵取りがしたいと願うのが本心だと思います。そこで、考えられるのが、第二会社方式です。第二会社を立ち上げる際に、仮に融資やファンドが組めない場合は、MBO(EBO)を活用することもできます。

債務の処理に当たって留意すべき点

このように抜本的な事業再生対策を講じる場合に、さらに留意すべき点があります。それは、債務の処理の仕方です。

ビジネスローンのリスク

まず、ビジネスローンは条件変更(リスケ)の交渉が難航しやすいので注意する必要があります。そもそも、いかに再建計画が素晴らしくても、リスケ自体に応じてくれない可能性があります。

私募債(直接金融)のリスク

次に、資金繰りのために私募債(直接金融)を導入するケースがありますが、この調達額を債権者である金融機関の口座に入金したとたんに、全額相殺されてしまったというケースがあります。『今さえ乗り切れば』という安易な発想で私募債を導入することは、厳に慎む必要があります。

売掛金担保融資のリスク

さらに、売掛金担保融資は、民事再生法によって再出発しようとした場合、担保に提供した売掛金が債権者に持っていかれてしまうことになりますので、その後の仕入れや運転資金が枯渇してしまう可能性があります。したがって当然、民事再生法申し立て直後に資金繰りが破綻して、完全な倒産に至ってしまうことでしょう。したがって、売掛金担保融資で今さえ乗り切ればという安易な発想で借りてしまうと、いざというときに自分の首を絞めることになりかねないのです。

保証協会付き融資の弊害

最後に、金融機関の最終処理は、基本的に①法的整理②債権放棄③債権の売却の3手法ですが、現実的には③の債権売却しかありません。つまり、サービサー等に売却するのです。したがって、この時点で、取引金融機関に変わりサービサーから債務の返済請求がくることになります。ただし、サービサー等は、結局は『買った金額よりも多額の回収さえできればよい』という組織です。すなわち、保証人が、サービサーなどが買い取った金額以上の『和解金』さえ支払えば、残った債務はすべて消えることになります。では、具体的に保証人はいくらを支払えばよいのでしょうか?現在の流れからすれば、答えは100~300万円程度です。したがって、ここでは保証人が破産する必要はありません。
ただし、この場合は『保証人に残る保証債務が金融機関のプロパー債務だけの場合』です。仮に保証協会付きの融資であれば、そうはいきません。会社が倒産し、保証協会(保証協会サービサー)に債権が移ると、こうした一部金額による和解が不可能になる可能性が高いのです(2006年1月より保証協会も債権放棄ができるようになりましたが、まだまだ歴史が浅いので信頼は低いと思います)。


参考:「中小企業再生完全マニュアル」(TKC出版)
 

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